MD-PhD コースを修了して


医学科5年  酒 井 遥 介  
 
 私は,本大学医学部医学科においてMD-PhDコースを選択し,2014年4月から2017年3月までの3年間,微生物病原学分野の足立昭夫名誉教授,野間口雅子教授のご指導のもと,大学院生としてウイルス学の研究を行いました。この春に医学博士号を取得し,現在は医学科5年次に復学し臨床実習に臨んでいます。MD-PhDコースは,医学科4年次終了後に大学院に移り,医師免許 (MD) 取得に先立ち博士号 (PhD) 取得を目指すプログラムです。本稿では,私が本コースを修了して思うことをお伝えします。
 まず,私が本コースを修了したからこそ学び得たと考える,二つのことを挙げます。一つは,「情報を検索し,課題を設定し,実験を立案し,結果を論文にする」という一連の知的作業の手法です。これは,学部生の短期の研究室配属実習だけでは経験し難く,本コースの最も有意義な部分であったと思います。研究では見本やヒントとなるものはあっても真の答えは自分で出さねばならず,小手先の手法ではまったく前進できません。先生方から幾度となくフィードバックをいただく中で,独創的な視点と発想の持ち方や,必要十分を見極め,情報と結果を洗練された形でまとめる方法論を学びました。とりわけ,根底に一貫した俯瞰的な視点を持ち,それに基づき思考できるか否かが肝要であることを,学会発表や論文執筆を通し,身をもって実感できました。
 もう一つは,「学問としての医学」を改めて認識できたことです。試験や科目とは関係のない,未知を内包した動的な学問体系として医学知識を捉えるようになりました。同時に,目的と必要性を鑑みながら文献にあたる習慣ができました。未知の専門分野であっても,論文が次々に発表され目まぐるしく更新されても,必要な情報を取捨選択し,目的に合わせて再構築する自信ができました。加えて,自らが研究し成果を発表する立場を経験したことで,その大変さと醍醐味を知り,論文や教科書の一行一行を批判的に吟味する姿勢を学ぶことができました。
 さて,大学院では,自分の裁量で時間を使いながら,一時的に医学科のカリキュラムから離れて研究生活を送ることになります。これにより自分の適性や将来像について熟考できることも本コースの利点の一つだと思います。私は本コースを選択した当時,自分に研究が向いているのか,将来医療よりも研究を優先したキャリアを選択するのか,考える材料がありませんでした。現在も最終的な決断には至っていないものの,院進学前と博士号取得後の現在では,漠然としていた部分が明瞭となり,考え方は大きく変わりました。3年間で習得・経験できることには限りがありましたが,具体的な知識・技術よりも,自分の思考力・思考法を根本から変容させることができたこと――いわゆる「リサーチ・マインド」を習得できたこと――が,この先臨床実習や国家試験を経てゆく過程で活き続け,自分の決断に新たな視点を添えてくれると確信しています。
 MD-PhDコースを修了・卒業された先輩方は,現在,基礎・臨床両方の様々な現場で活躍されており,本コースの同窓会や親睦会で,在学生を交えて親睦を深める機会があります。昨年度からは医学部教育支援センターのウェブサイト内に専用ページが設置され,SNSアカウントも開設されていますので,本コース進学を検討されている医学部生の方はぜひ一度御覧ください。
 最後に,私がこの3年間で様々なことを学び,経験し,自分のものとすることができたのは,足立先生,野間口先生をはじめとする微生物病原学分野の皆様,厚いご支援をいただいた多くの方々のお陰であることに相違ありません。この場をお借りして深謝いたします。