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青藍会東京支部長
医学部20期 上田 茂

 東京支部幹事会が本年6月13日午後7時から東京駅のすぐ傍のレストランで開かれました。小松真名誉支部長(医大2期)と奥様、濱本恒男先生(医学部23期)、伊藤もとみ先生(医学部26期)、南海昌博先生(医学部26期)、川村実先生(医学部27期)、西村光世先生(医学部27期)、西田玲子(医学部30期)、私の9名が参加しました。海の日に開催される青藍会総会に向けて協議するために、いつもこの頃に幹事に集まっていただいています。青藍会総会における東京支部からの要望や来年3月の東京支部総会・講演会、東京支部活動などについて話し合いました。青藍会への寄付については法人化されると税控除を受けられますので、法人化について検討することや、青藍会本部ではホームページの充実に向け取り組まれていますので、多くの会員に関心をもっていただくようなコンテンツの充実やアクセスのしやすさを図ることなどを提案してはとの意見が出されました。
来年の東京支部総会・講演会は、3月9日(土)午後5時から今年の総会と同じ会場の日比谷松本楼(千代田区日比谷公園1-2 電話03-3503-1451)で開催することにしました。講演の演者は、若手で活躍されておられる先生にしていただこうと議論し、佐藤隆宣先生(医学部39期、済生会中央病院乳腺外科部長)にお願いすることになり、ご連絡したところ快くお引受けいただきました。佐藤先生から講演演題「乳癌治療の変遷と今後」の抄録を届けていただきましたので、以下のとおりご紹介します。ぜひ多くの方にご講演を聴いていただきたいと思います。

 日本では依然として乳癌の罹患数及び死亡数は増加の一途を辿っている。マンモグラフィ導入より18年が経過し、精度管理も標準がされ、検診で発見される早期の乳癌は全体の3割を占めるようになった。しかし、本邦の乳癌検診の受診率は30数%程度で、欧米諸国と比べて著しく低い。受診率50%以上で死亡率の減少が見られるという乳癌検診の目的達成にはほど遠い。
 1970年代以降、乳癌の多くは診断時にはすでに遠隔転移(画像診断などでは検出できない、微小転移)を伴っているという概念が定着し、乳癌は全身疾患であると考えられるようになった。こうした背景をもとに乳癌の外科的治療は、Halstedによって確立された胸筋合併乳房切除術から拡大乳房切除術の時代を経て現在、胸筋温存乳房切除術へ、そして乳房温存術へと移った。現在、乳癌の外科的治療で主に行われている術式は、胸筋温存乳房切除術と乳房温存手術とである。検診の受診者数の増加に伴い、2cm以下の乳癌の発見率が上昇したことや術前化学療法が普及したことで、乳房温存手術の適応が増加したが、一方乳房切除術は大きく減少した。乳房温存手術においては、整容性に対しての患者の期待が高まっており、切除部位の欠損部を上手に充填し整容性を向上させるOncoplastic Surgeryの手技が普及してきている。一方では、2013年に人工乳房(インプラント)による乳房再建が保険適用となったことも追い風となり、乳房の形状を保ちたいという希望がある場合には無理な温存を避けて、形成外科との連携で乳房切除と同時に乳房の再建が行われるようになった。
 腋窩リンパ節に対しても、通常の腋窩郭清から臨床的に腋窩リンパ節転移陰性の症例に対してはセンチネルリンパ節生検へと手術の縮小化がはかられた。そうした背景には、放射線治療、化学療法、内分泌療法が進歩したことで手術主体の治療から乳癌の生物学的特徴に基づいた集学的治療へとシフトしていったこと、患者のQOLを重視するようになったことが大きく影響を及ぼしている。
 乳癌は、2001年にSørlieらによって、乳癌の多数の遺伝子の発現を調べることにより、新しい乳がんの分類方法が提唱された。このマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析によって乳癌は、LuminalA. Lumainal B, HER2, Basal-like, normal brestなどのintrinsic subtype分類された。しかし実地臨床ではこの手法での遺伝子発現解析を行うのは困難なため、以前より我々が使っている免疫染色法を用いて、乳癌組織のER, PgR, HER2, Ki67の発現を評価し、代替的なサブタイプに従って治療方針を決定するようになった。従来のTNM分類(腫瘍の大きさ・腋の下のリンパ節転移の状況・遠隔転移の有無によるステージ分類)を用いた病期リスクから、バイオロジー(生物学的特徴)を考慮した個々のサブタイプに応じた治療体系が行われるようになった。薬物療法は、この10数年間に次々に新しい有用な薬剤が開発されて、エビデンスに基づいた標準治療が広く行われるようになった。今後もこれらのサブグループ別に有効な分子標的薬が開発され、サブグループ別の個別化治療がさらに進歩していくものと思われる。

 総会では、青藍会本部からは河野知弘事務長代理(医学部20期)、また徳島大学医学部からは丹黒章医学部長(医学部27期)が、最近の青藍会の動きや徳島大学の動きなどについてお話していただくこととしております。
 7月16日に開催された青藍会総会には、川村先生に参加していただきました。東京支部活動報告の冒頭に、金比羅様に次郎長親分の名代としてお参りし、その帰途、都鳥の吉兵衛に殺された「森の石松」を取り上げ、金比羅さんに近い阿波徳島に東京支部長の名代として参加したことをお話されたところ大いに受けたようです。川村先生のユーモアはいつも素晴らしいですので、きっと多くの方が川村先生のご挨拶を楽しまれたのではと思いました。旧交を温め、また青藍会受賞講演、新教授就任講演を数々、大変勉強になったとご報告いただきました。
 日頃は、東京支部メーリングリストを通じて情報発信に努めています。徳島大学総務部総務課から毎月送られてくる徳島大学メールマガジン「とくだい通信」には、徳島大学の教育、研究、社会貢献における熱心な様々な活動が紹介されていますので、先生方にご案内しています。大勢の方に徳島大学のことをもっと知って関心をもっていただきたいと思っています。また、新聞等で徳島大学や同窓の先生の活躍が紹介されている記事を読みますとつい嬉しくなって、情報発信しています。いくつか紹介しますと、6月の日経新聞夕刊の「人間発見」に眼科医の内藤毅先生(医学部27期、徳島大学国際医療センター特任教授)が発展途上国で診療や現地医師の指導にご尽力されてことが5回にわたって連載されています。また、7月19日の日経新聞で2016年度に特許など知的財産による収入額が多い国立大学では徳島大学が総額では7位、研究者1人当たりでは3位と健闘しており、脳卒中後の体の麻痺軽減の治療法開発が貢献したとの記事がありました。このような記事がもっと多く掲載されることを願っています。
また、これまでも西田先生のソプラノ歌手としてのご活躍をご紹介していますが、9月17日の紀尾井町サロンホールで開催された「ラルバベルカントソサエティ東京コンサート」についてもご案内しました。西田先生は、歌曲「一粒の涙」(ドニゼッティ作曲)、「愛を知る人たちは」(オペラ「魔笛」より、モーツァルト作曲)、「私の願いを聞いてください」(オペラ「イル・トロヴァトーレ」より、ヴェルディ作曲)の3曲を歌われましたが、素晴らしい歌声とパフォーマンスを多くの観客に披露していただきました。ブラボーでした。なお、西田先生は9月15日のIGCS(国際産婦人科腫瘍学会)懇親会において産婦人科医で結成されたNST管弦楽団をバックに歌われるなど幅広くご活躍されています。
 今後もこのメーリングリストを活用して会員間の交流を深めたいと思います。皆様からも積極的な情報提供をよろしくお願いします。また、多くの方にこのメーリングリストに参加していただきたいと思っています。参加を希望される会員の先生は、森岡久尚先生(医学部45期)宛てにご連絡をよろしくお願いします。
 来年3月9日(土)に開催される東京支部総会・講演会には多くの方に参加していただきたいと思います。皆様にお会いすることを楽しみにしています。 平成30年10月記

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オペラ「イル・トロヴァトーレ」より二重唱

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国際婦人科腫瘍学会懇親会でのコーラス