医学科5年 栗 原 健 士
本年度よりMD-PhDコースを修了し医学科5年に復学する事となりました栗原健士と言います。私はHBS研究部・生体防御医学分野・安友康二教授のもと基礎研究に携わりましたので,このコースへの進学理由・このコースで得られた事を書かせていただきます。
MD-PhDコースと言いましてまだまだ馴染みのないものですので,簡単に説明させていただきます。現在,日本では研究に携わる医者の数が多いとはいえなく,このコースに進むことにより一足先に研究マインドを学ぶ有意義な機会になっています。ですので,本コースの目的は研究のできる医者を育てるのが目的として医学科4年次修了時に3年間研究に没頭し,研究とは何だ?というものを学ぶコースとなっています。ですが,このコース自体がまだまだ認知されておらず進学する学生は少ないのが現状です。今後このコースに進む学生が増えてくれれば何よりと考えています。
まず,私がMD-PhDコースに進むに至った動機・生体防御医学分野に至った動機について述べさせていただきます。このコースに進んだ理由はもとより研究職というものに興味があったということが大きな理由です。もちろんそれだけではなく,私は医学科3年時にある研究室配属で生体防御医学分野を選択し,この分野に強く興味を持ちました。その理由は,生体防御分野は免疫系,Tリンパ球が中心となって始まる免疫応答の解明を試みている分野になります。免疫系は多くの疾患からの回復・原因となることがわかっており,免疫系の詳細な理解というものが人の健康の維持・
疾患の治療に直接的につながると考えられたからです。このような理由からMD-PhDコース・生体防御医学分野に進むことに決めました。3年時に生体防御医学分野を選択できたことは非常に運が良かったと今では思っています。
さてこのような理由でこのコースに進学しましたが,実際にどのような研究ライフを送っていたかというものが気になるところです(のはず)。生体防御医学分野の一週間は月曜の朝にある毎週の進歩状況を報告するmeetingから始まります。この時に自分行っている以外の先生方の研究の発表もあり,自分の研究にたいするヒントとなる情報も数多く得られました。また,水曜日には他のラボとの論文の読み合わせもあり,様々な雑誌に掲載された論文を読み合わせ討論する場になっています。残りの日は完全にフリーになり,自分で予定を組み進めていくとい
うものになっています。この様な生活のもと私は免疫系に広く発現しているある表面分子についての研究を3年間行いました。この3年間でいい結果が出る時もあれば,良い結果が出ないときも当然ありました。そのようなときは初めのうちはモチベーションも下がりなかなか進まない時もありましたが,指導教官から「たんたんとやることが大事」と言われ,実際その先生もやっており見習わなくてはと思い,そのような精神のもと3年間すすめていきました。また3年間のうちに様々な国内学会に参加し,様々な先生方との質疑応答の中で自分の行っている研究の方向性が明確なものとなって行きました。その結果無事学位審査を終えて,このコースを終えることができました。
現在私は医学科5年に復学し日々,久々の授業に追われていますが何分3年間のブランクがあり,わからないことだらけになっていますが3年間で培った精神のもと今後の実習に励んでいきたいと思います。
最後になりますが,MD-PhDコースに進むにあたって青藍会の皆様からMD-PhD奨励金による入学金の助成をしていただきありがとうございました。また3年間ご指導いただいた安友教授・前川准教授を始めとした生体防御のスタッフの皆様ありがとうございました。
MD-PhDコースを修了して
医学科5年 黒 川 憲
MD-PhDコース5期生の黒川憲と申します。私は,2009年3月に医学科4年次を修了した後,MD-PhDコースを選択し,同4月に大学院医科学教育部プロテオミクス医科学専攻へ進学致しました。そして,ストレス制御医学分野にて3年間基礎医学研究に従事し,2012年3月に医学博士号を取得致しましたので,この場をお借りしてその経緯をご紹介致します。
ストレス制御医学分野六反教授との出会いは,2005年,医学部1年次の前期に受講した講義でした。そして,当時基礎研究棟の改修工事で仮移転していた外来診療棟3階にて,夏休みに簡単な実験をさせて頂けることとなりました。六反教授を始め,当時の教員・大学院生との出会いが,数年後にMDPhDコースを志望する大きな契機であったと思います。
その後,3年次の研究室配属で再びストレス制御医学分野を選択し,新規non-coding RNAの機能解析を行いました。1年間の研究室配属の終わる頃には,もっと本格的に一定期間基礎医学研究を行ってみたいと強く思うようになっていました。また,4年次の5月から7月にかけてテキサス大学医学部ヒューストン校のサマーリサーチプログラムに参加した経験も,MD-PhDコースを志望する大きな契機となりました。留学中は,テキサス大学のMD-PhDコースの責任者の教室に配属され,実際に活躍している多くの現役のMD-PhDコースの学生と交流・意見交換をすることが出来ました。彼らは正真正銘のエリートで,強い刺激を受けたことを今でも覚えております,帰国後,徳島大学のMD-PhDコース(大学院医科学教育部)へ進学することを決心し,4年次の夏休み明けに願書を提出致しました。大学院入学の際には,青藍会より入学金相当のご支援を頂き,誠にありがとうございました。
さて,実際に大学院に進学した当初は,どのように研究を展開して行けば良いのかよく分からない,とても不安な時期がありました。3年次の研究室配属等で基本的な実験手技は学んでおりましたが,自分で仮説を考え,研究計画を立て,それを実際に実行に移すトレーニングをする機会はなかなか学部学生の頃に無かったためであると思います。しかし,六反教授を始め,当時の私の指導教官の熱心なご指導により,徐々に研究が動き出し,次々と新たな疑問・課題も湧いていき,いつの間にか研究に没頭していました。1年次の10月には,初めて国際学会にて発表させて頂く機会がありました。その後,2年次にはアメリカ消化器病学会,3年次にはEMBOmeetingと,大学院在学中に3回臨床系・基礎系の国際学会にて発表させて頂くことが出来ました。その間,国内の学会にも参加しつつ,2年次からは徐々に学位論文を作成していきました。論文を書くという作業も全く初めての経験であり,自分の研究の正確な立ち位置や周辺知識の理解から始まり,実験と平行した執筆作業は膨大な時間を要しました。
また,研究過程では,一つのFigureを作るために数ヶ月間ネガティブなデータが出続けたり,仮説を否定するデータが出たり,落ち込むことも何度もありました。そうした際も,ストレス制御医学分野の先生方,そしてMD-PhDコースの先輩・同期・後輩の存在はとても大きく,その他多くの方々の暖かいご支援のお陰で,今まで乗り越えて来られたのだと思っております。
MD-PhDコースを選択すると,医学部を卒業するまで通常より3年多く時間を要しますが,それにも増して,この3年間で非常に多くのことを学び,また力強くなることが出来たのではないかと思います。2012年4月より医学科5年次に復学致しましたので,今後は臨床の勉学にも励み,将来こうした様々な経験を生かせるように,頑張って参りたいと思います。
最後になりましたが,本コースでは,ストレス制御医学分野六反教授,MD-PhDコースの整備にご尽力されている玉置医学部長や青藍会を始め,多くの先生方に大変お世話になりました。この場をお借りして,厚く御礼申し上げます。