医学科5年 赤 池 瑶 子
私は,2011年にMD-PhDコースに進学し,大学院ヘルスバイオサイエンス研究部ストレス制御医学分野の六反一仁教授のもと, 3 年間基礎医学研究に携わりました。MD-PhDコースを修了後,本年度より医学科5年次に復学し,臨床実習に励んでいます。この場をお借りして,MD-PhDコースを修了するにあたっての感想を述べさせていただきます。
MD-PhDコースとは,医学研究を志す医学生に対して,早期に集中して研究に取り組む機会を与えることにより,医学・医療の急速な進歩と社会情勢の変化に対応できる柔軟な思考力を持つ若手医学研究者を養成することを目的としています。本学のMDPhDコースでは,医学科4年次を修了後,大学院博士課程に進学し,3̃4年間の研究活動を経て医学博士 (PhD)の取得を目指します。修了後は,医学科5年次に復学し,残りの課程を修了後,医師国家試験を経て医師免許 (MD)を取得します。現在,MDPhDコース出身者は現役生を含め,計14名となりました。研究に興味のある医学生には,ぜひMD-PhDコースへの進学も視野に入れていただければと思います。
私が初めて基礎医学研究に出会ったのは,医学科3年次の研究室配属実習でした。その頃から,六反一仁教授の研究室にお世話になり,実験手技の基本から研究の組み立て方,論文の読み方,プレゼンテーション方法まで丁寧にご指導いただきました。まだ誰も知らない現象を証明すること,世界を相手に仕事ができることに魅力を感じ,MD-PhDコースに進む決心をしました。
研究では,仮説を立て,証明方法を考え,実験し,結果を検証するという流れを繰り返します。どうすれば研究を論理的に説明できるか,どのように発展させていくかを考えることは面白く,やりがいを感じる点だと思います。また,新たな発見を示唆する結果が出た時の喜びは何にも代えがたいほど大きいものです。3年間の研究生活の中では,なかなか思うように研究を進めることができず,先が見えなくて落ち込む時期もありましたが,「とにかく実験を続けなさい」という先生の激励に支えられ,無事に学位審査を終えることができました。良い時も悪い時も諦めずに続けること,自ら動かないと何も動き出さないことの大切さを痛感しました。また,学位論文作成だけでなく,国内・国際学会での発表や他の論文作成,研究費の申請の機会もいただき,研究者として働くための基礎もご指導いただきました。特に学会では,多くの研究者や学生と意見交換できただ
けでなく,実験方法や試料を協力していただくこともでき,人とのつながりの大切さを学びました。
将来は,この経験を生かして,疾患の病態や治療の効果等の分子機構を研究し,臨床現場に還元できるような仕事ができたらと思います。本学のMDPhDコース出身の先輩方は,臨床現場でも基礎研究でも活躍されており,身の引き締まる思いです。日々医療に携わり,医学を学び続けることができることに感謝し,精進していきたいと思います。
最後になりましたが,MD-PhDコースで就学するにあたり,玉置俊晃前医学部長,苛原稔医学部長,青藍会の皆様をはじめ多くの方々にご支援いただきました。六反一仁教授をはじめとするストレス制御医学分野の皆様には,研究だけでなく,医師を志す者としての素養をご指導いただきました。また,MDPhDコースに進学したいという私の我儘を快く受け入れ,いつも支えてくれた家族にも感謝しています。
この場をお借りしてお世話になった全ての方々に厚く御礼申し上げます。
MD-PhDコースを終えて
医学科5年 三 橋 惇 志
私は2011年3月で医学科4年生を修了後,MDPhDコースとして3年間呼吸器・膠原病内科学分野で研究に取り組んで参りました。この度西岡教授を始め先生方の厚い御指導により無事学位を取得し,5年生へ復学することとなりましたのでこの場をお借りして御礼とこれまでの感想を申し上げたいと思います。
呼吸器・膠原病内科で私は大学入学時より研究をさせて頂いており,MD-PhDコースの3年間もその延長線上という形で取り組んで参りました。私は大学入学前より肺癌研究に強い興味を抱いており,早い段階から少しでも携わりたいと考えておりました。その際に肺癌研究の分野で多くの成果を出している呼吸器・膠原病内科の存在を知り,前教授の曽根先生にも温かく迎えて頂けたことから継続して研究を行うこととなりました。当時呼吸器・膠原病内科にMD-PhDコースとしてすでに所属されていた荻野先生に御指導頂き,最初は基本的な手技でも失敗をしていましたが段々と自分で試行錯誤しながら研究を進めていくことができるようになりました。その時点で継続していた研究テーマを持っていたこともあり,早い段階からMD-PhDコースへ進むことは決めていました。
MD-PhDコースでの最初の1年間は,先に研究をされていた大学院の先生方にほとんど依存するような形で過ごし,実験で行き詰まりを感じるといつでも相談に乗って頂いていました。しかしながら2年目以降は指導して頂いていた先生方の卒業や,新しい学部学生が多く研究室へ加わったこともあり自分で細かな方針を決定することや,他の研究へ協力する機会も増えて参りました。数多く失敗もいたしましたが,その度に先生方と相談してより適した方法を模索していった経験はこのコースの中で得られた最も重要な成果の一つだと思います。そのような手さぐりの中で博士論文完成にまで辿り着けましたのは,ひとえに先生方の適切な助言の賜物であったと痛感しております。
また,MD-PhDコースでの3年間の間に数多くの国際学会,国内学会で研究成果を発表する機会を頂きました。私はもともと大勢の前での発表を苦手としており,特に国際学会では慣れない英語での受け答えに大変苦労いたしました。それでも,様々な分野,立場の先生方から自分の研究に関するアドバイスを得られる機会は貴重なものであり,その意見は研究を続ける大きなモチベーションとなりました。人に自分の意見を説明することは今後も臨床,基礎を問わず常に必要となるものであるため,その練習としても非常にいい経験となりました。
自分が興味を持った内容に集中して取り組むことができたこの3年間は毎日が驚きや発見の連続であり,瞬くままに過ぎて行きました。今再び5年生に戻り臨床の勉強をさせて頂いておりますが,これまでのブランクに不安を覚えながらも疾患の病態生理に対する理解など小さな点においてもMD-PhDコースでの日々の大切さを実感しております。現在も臨床実習と共に研究は継続しており,少しでも実臨床に繋がるような成果を残せるよう尽力して参りたいと考えております。最後になりましたが,MDPhDコースで勉強をさせて頂くにあたり多大なる御支援を頂きました青藍会の皆様,また3年間にわたり御指導を頂きました西岡教授を始め呼吸器・膠原病内科の先生方に厚く御礼を申し上げます。