About Lexicon

3年間を振り返って 
宮 田 晃 志(医学科5年)

 私は、MD-PhDコース生として臨床薬理学分野の石澤啓介教授の下、3年間大学院で研究活動に従事してきた。振り返ると3年間という期間は驚くほど早く過ぎていった。本稿では、その3年間を振り返り、研究の意義と研究を通じて得た経験について記載したい。

 私が大学院に入学した2021年は、既に日本でCOVID-19が流行していた。COVID-19の流行により様々な日常生活に制限がかかっていたことは記憶に新しく、徳島大学でも医学臨床実習を含め多くの学生活動が制限されていた。一方、すぐにCOVID-19に対する研究が世界中で始まりCOVID-19の存在が確認された後1年ほどでワクチンが開発され、臨床現場に普及していった。COVID-19に関する論文は現在までに4万報を超え、少しずつだが病態・特徴が解明されてきている。COVID-19感染症の流行は研究の重要性を再認識させられた出来事である。COVID-19に限らず、今日の医療の発展はこれまでの先達による研究の上で成り立っている。いわゆる、「巨人の肩の上に立つ」である。このことは大学院生活を通じてより強く実感した。クリニカルクエスチョンを解決するためには、基礎医学による検討や臨床応用のための臨床試験が必要となり、医療の進展において研究は不可欠である。大学院での研究活動を経て基礎研究の必要性や研究の意義などを実感できたことは、今後医療に携わる上で重要な機会であった。

 私が所属してきた臨床薬理学分野は、薬剤と有害事象を主な研究テーマとした研究室であり、抗がん剤や抗菌薬に起因する自己免疫疾患や心血管疾患、腎疾患など幅広い有害事象を取り扱っている。一つの研究室で多彩な研究を行っており、研究室セミナーを通して循環器、神経系、腎臓など幅広い分野の知見を得ることができたのは当研究室ならではと考える。また、臨床薬理学分野には薬剤師や薬学部生が多く所属しており、薬剤と有害事象の研究を行う上で薬剤のプロの視点からアドバイスを得ることができたことも大変貴重な機会であった。実臨床での薬剤の使われ方の差異や臨床での課題など、臨床経験のない身ではなかなか知りえないことを、薬剤師の先生方からご助言いただくことで自身の研究の臨床的意義を実感することにも繋がった。

 加えて、MD-PhDコースに入る前の自分と比較すると、文献検索能力、計画力、論理的思考力、文章作成力、プレゼン能力といった研究力はこの3年間で飛躍的に成長したと実感している。医療に限らず、今後の自分の人生にとっても大きな財産を得ることができた。もちろん、このような成長は研究からしか得られないわけではないが、先述した医療における研究の重要性から考えても、大学院への進学を迷っている方々には研究に目を向け、それを経験することを推奨したい。己の未熟を実感することも多いが、大学院3年間で学んだことを今後の医学部生活、ひいては医師としての糧にして、医療に貢献したいと思う。

末筆ながら、終始熱心なご指導ご鞭撻を賜りました石澤啓介先生をはじめとする諸先生方に、この場をお借りして厚く御礼申し上げたい。