発行元:株式会社 叢文社、 2015年11月15日発行 著 者:橋本 忠世 (徳島大学医学部第1期生、ロヨラ大学名誉教授、在 U.S.A. ) |
紹介者:塩田 洋(徳島大学医学部14期生)
著者の橋本氏は医学部1期生で、細菌学講師時代に2度目のアメリカ留学を果たし、1年間で帰国する予定であったが種々の理由でそのままアメリカに留まることになり、やがてはロヨラ大学の微生物・免疫学教室のChairmanや名誉教授にもなっている。その波乱に富んだ生涯は、青藍会会報第78号(1~14ページ)に詳しく記載されている。著者は退職後大学から少し離れたシカゴ郊外に住み、近くのゴルフコースに毎週通っていたそうである。今回紹介する本は、そのゴルフコース近辺の湖で出くわした白鳥の番いとその子育て完了までの約半年間に及ぶ世界で初めての自然(野生)観察記録である。著者の科学者としての鋭い観察力、高性能カメラを操るプロ級の写真技術が生み出した美しい写真の数々(全て自分で現像)、加えて著者の白鳥家族に対する優しさが全編を通じて溢れており、素晴らしい一冊に仕上がっている。
4月25日一羽の白鳥が巣の真ん中に座り込み動かない。望遠で確かめると卵は7個あった。5月22日7羽の雛を発見。親鳥は生後の雛にどのように餌を与えるのか?何と雛たちは生まれた次の日から自分で湖に滑り込み、水面に浮かぶ水草を嘴で拾い、水とともに飲み込むようにして食べた。夏、雷雨を伴う嵐があった翌日、雛は6羽に減っていた。さて雛たちには秋までに習得しなければならないことがあった。飛ぶ事である。親鳥が力強く水面を蹴り20~30m滑走、その後空中に舞い上がった。それを見た子供達は羽を思い切りばたつかせ滑走(水面を走る)、少し離水したが直ぐに着水。これを繰り返し飛べるようになった。9月下旬編隊飛行の練習中、子白鳥一羽が橋の欄干に衝突し、敷板上に転落。一部始終を目撃していた著者はびっくりして現場に急行。足を引きずりながら歩こうとする怯えた子白鳥をみて、著者は駐車場へ走り車から非常用の毛布を取り出してきた。毛布でやんわりと白鳥全体を包み、更に白鳥に目隠しをして抱き上げ、そっと湖に放してやった。数日間、傷ついた白鳥は深い茂みの中でじっと休んでいた。10月に入ったある日、両親と元気な5羽の子供達は傷ついた子白鳥をあとに編隊を組み、南の空に飛び去って行った。残された子白鳥も、10月半ばを過ぎた頃南の空に飛び去ってしまった。
本書は野生白鳥の子育ての様子を、産卵から最後の飛行まで、自然環境の中で詳細に観察・記録している。読み終えると、著者の白鳥一家に対するやさしさと愛情を感ぜずにはいられない。孫達にもぜひ読ませたい一冊である。
なお著者と奥さんは現在、次男(外科医)さんの近くサンフランシスコ郊外の Santa Rosa に住んでいる。著者は2020年6月90歳になるが、ご健在と聞いている。
徳島大学が「新型コロナウイルス対策 修学支援事業基金」へのクラウドファンディングを立ち上げました。
▼「新型コロナウイルス対策 修学支援事業基金」プロジェクト
大学の大きな使命の1つに教育があります。しかしながら、新年度が開始された4月、全国に「緊急事態宣言」が出され、
大学生が大学で学ぶことができていない状態になっています。加えて、保護者の収入減、アルバイトができない等により、
経済的苦境に追い込まれている、大学生が多くいます。この新型コロナウイルス感染症による未曽有の事態が収束し、
感染拡大以前の日常になるには時間が必要です。
その期間、命を守り、感染を拡げず、学ぶための支援が学生には必要です。そして、学生の活動を明日に繋げるためには、
多くの対策が必要です。継続的に多くの学生を支援するために、ご賛同いただける方のご協力を心からお願い申し上げます。
プロジェクトページはこちら(募集は6月30日まで)
https://otsucle.jp/cf/project/2789.html
皆様の温かいご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。